Project Story 02

遊休農地を活用した、本州最大級の
キウイフルーツ園地開発に挑む

官民連携による、遊休農地を活用した地域農業活性化プロジェクト

Project Outline

あさい農園は、ニュージーランドのキウイフルーツ販売大手「ゼスプリ社」と事業提携し、本州最大級の大規模キウイフルーツ園地の開発に着手。2019年に、遊休農地や耕作放棄地が地域課題となっていた三重県度会郡玉城町と産地化連携協定を締結し、自治体支援のもと、地域の地権者52人から農地を借りうけ、同町原地域に栽培面積6.9ヘクタール、総面積7.3ヘクタールの広大なキウイフルーツ園地を整備した。約8千本のキウイフルーツの苗木を植え、2023年には玉城町産ゼスプリブランドのキウイフルーツの出荷を開始。新たな町の特産品として多くの期待がかかる。またこの取り組みは、自治体と企業が連携した農業の取り組みのモデルケースとして、同じく遊休農地や耕作放棄地の課題を抱える地方自治体などからも大きな注目を集めている。

Members

玉城町長

辻村修一

株式会社浅井農園
代表取締役副社長 COO

浅井洋平

Chapter 01

自治体と連携した遊休農地の集積で、
地域農業活性化に挑む。

浅井

ことの起こりは2017年、あさい農園がニュージランド(以下NZ)のキウイフルーツ販売大手「ゼスプリ社」からキウイフルーツの育苗依頼のお話をいただいたことに始まります。世界中に販路を持つゼスプリ社は、日本でも契約園地を拡大するため、ゼスプリブランド品種のキウイフルーツ苗を作ってくれる日本の育苗会社を探していたんです。そこでもともと植木事業をやっており、育苗技術を持ち合わせていた弊社にお声がけいただきました。「おもしろそうだね」ということで、ゼスプリ社と提携して、キウイフルーツの苗づくりのプロジェクトを進めていました。しかしその後、「どうせだったら、あさい農園でもキウイフルーツ栽培に挑戦しよう」となったんです。キウイフルーツ栽培ができるまとまった土地はないかと探していて、三重県に相談したところ、玉城町さんとのご縁をいただきました。

辻村町長

玉城町としては、2018年8月頃に三重県から誘致のお誘いのお話をいただいたというのがきっかけですね。
玉城町は昔から農業が盛んな町で、かつては次郎柿や桃の果樹園が広がっていました。しかし、近年は高齢化や後継者不足などにより、遊休農地や耕作放棄地が増えていました。そんなとき、三重県から「あさい農園さんがキウイフルーツ栽培をするための農地を探しているから誘致してみてはどうか?」と。あさい農園さんが先進的な農業に取り組んでおられるという情報は、私の耳にも届いていましたし、「遊休農地をぜひ活用してもらいたい」と手を挙げさせていただきました。

浅井

玉城町さんにご協力いただけると知ったときは、私たちも本当にありがたくて、心強かったです。こうして玉城町の原地区で、地権者の方々から農地をお借りして大規模農地に集積し、キウイフルーツ園地を整備する計画が始まりました。まずは地権者の方々に事業計画のご説明などをして、農地をお貸しいただけないか交渉していったのですが、とてもスムーズに進んで驚きました。私たちがお伺いする前の段階から、玉城町さんでも事前に説明などをしていただいていたんですよね?

辻村町長

そうですね。玉城町役場からも地域のみなさんに「キウイフルーツ園地計画のお話がある」ということはお伝えしていました。そのうえで、「キウイフルーツ栽培についてや、詳細な事業計画については、あさい農園さんからもくわしくご説明いただいたほうがいい」ということで、事業説明会などを設けさせていただきました。

浅井

私たちはこれまで、他地域でも土地の集積をした経験がありますが、農地の集積は一朝一夕に進むものではないんです。やはり代々引き継いで来た土地だったり、地権者のみなさんそれぞれに強い思い入れがある場合も多いですからね。しかし今回は町長をはじめ、玉城町役場の方々がご尽力くださったおかげで、驚くほど早く、わずか数ヶ月のうちに地権者のみなさんの同意を取ることができました。そして最終的には、栽培面積としては6.9ヘクタール、総面積では7.3ヘクタールにも及ぶ農地を合計52名の地権者の方々からお借りできることになったんです。

辻村町長

遊休農地や耕作放棄地といってもいろいろあります。ただただ放置されてしまっている土地もあれば、地権者の方々が、周りの方に迷惑をかけないように維持管理はしっかりされておられたり、「いずれはまた農作物を育てたい」との考えで、土地を残されておられる場合もあります。玉城町の場合は、完全に放棄されているというよりは、地権者の方々それぞれが、思いを持って管理をしてくれている土地が多かったので、地域の未来についても真剣に考えて、「再び果樹園農業に栄える玉城町を」と決断してくれたんだと思いますね。

Chapter 02

地域資源を活かした土壌改良などにも取り組みながら、
ニュージーランド型大規模キウイフルーツ園地を整備。

浅井

農地の集積を終えた私たちは、2019年に玉城町とあさい農園とで産地化連携協定を締結し、本格的にキウイフルーツ園地の整備に着手しました。まず取り組んだのが土壌改良。確保した農地は水素イオン濃度が少し高く、このままではキウイフルーツの根が傷付きやすいという問題がありました。そこで土壌を改良する必要があったんです。しかし、農地が広大だったため土壌改良材も大量に必要でした。

辻村町長

そうでしたね。あさい農園さんが地域資源の有効活用という視点から、松阪牛の牛糞堆肥や、牡蠣の貝殻などを土壌の改良材として検討されているというお話を聞いて、それならばと私たちは地域の松阪牛生産者さんの情報などを提供させていただきました。

浅井

あのときは本当に助かりました。松阪牛の生産者を中心に、地元の養牛場から2,000トン以上の牛糞堆肥を、そして鳥羽の牡蠣養殖業者から牡蠣の貝殻をご提供いただいて、牡蠣殻石灰300トンを土壌改良に使用しました。これだけの量を確保することができたのは、玉城町からいただいた情報のおかげです。同時にハード面の整備も進めていきました。果樹棚や冠水設備などを設置し、キウイフルーツ栽培に適した営農環境を整えました。今回はキウイフルーツ栽培の先進国であるNZ型のキウイフルーツ栽培を導入しようと動いていましたので、実際にNZに行って設備を買い付けたり、現地の生産者から栽培技術を学んだり。そして、いよいよ2020年に苗を植える段階になり、2月に定植式を実施しました。

辻村町長

定植式には私も参加して苗を植えさせてもらいました。三重県知事や地権者の方々、地域の方々も様子を見に来てくださっていましたね。整備されたキウイフルーツ園地は、本州最大級ということで圧巻でしたよ。

辻村町長

ね。整備されたキウイフルーツ園地は、本州最大級ということで圧巻でしたよ。

浅井

ありがとうございます。これほど大規模な果樹園というのは、私たちも初めてでしたし、「玉城町のみなさんのおかげでここまでこれた」と私も感慨深かったです。開設した園地には約8千本のキウイフルーツの苗木が植えられました。その後、コロナ禍となりNZから来ていただく予定のスーパーバイザーの方が来日できなくなったり、防風ネットの工事が遅れているところに、苗が強風にさらされて植え替えを余儀なくされるなど、いろいろなトラブルもあったのですが、それでも2020年10月の初めての収穫時には、計画を上回る量の収穫ができました。再び町長にもご出席いただいて初収穫の式典をさせていただきましたよね。

辻村町長

そうでしたね。定植式や初収穫の式典を開催するということもそうですし、事業の成果や結果を地域にもしっかりと発表してくださるあさい農園さんの姿勢はさすがだなと思いました。我々や地域の方々にもすごく配慮して事業を進めてくださっているのがわかり、地域のみんなからも信頼を集められる理由がわかった気がしました。そのとき収穫されたキウイフルーツは、ゼスプリ社の保管庫で追熟された後、2023年から出荷開始とのことだったんですが、玉城町産キウイフルーツの出荷がとても待ち遠しかったのを覚えています。

浅井

地権者や地元の方々にも収穫に参加してもらい喜んでいただけたのは、私もとても嬉しかったです。生産能力を高め、安定的に収穫できるようにするにはこれからも改善が必要ですが、1年目としてはとても順調に進んで、ほっとしました。

Chapter 03

新たな特産品や雇用機会の
創出などの付加価値も。

辻村町長

そして2023年になって、ついに玉城町産のゼスプリブランドキウイフルーツが出荷されるようになりましたよね。私の元にも「どこどこのスーパーで玉城町産のキウイフルーツが売られている」という情報がすぐ届いて。町の方々の間でも「ゼスプリ社のキウイフルーツがこの玉城町で作られている」というのが浸透しつつあります。

浅井

まだ始まったばかりですが、地域の新たな特産品として私たちのキウイフルーツが認められるようになってきているのは、うれしい限りですね。

辻村町長

現在、私たちは町の重点政策として「健康長寿」を掲げて、町民のみなさまの健康推進にも取り組んでいるのですが、キウイフルーツはビタミンCも豊富で健康にもいいでしょ。合わせてPRしていきたいと思ってね(笑)。

浅井

あらためて今回、地方自治体である玉城町さんと私たちの連携体制でこのプロジェクトに取り組んだ意義やメリットは、本当に大きかったと思いますね。「遊休農地の有効活用」というそもそもの大義はもちろんのこと、他にもさまざまな付加価値を生み出すことができているなと感じます。先ほど町長がおっしゃられた、町の新たな特産品を生み出すことができたという点もそうですし、あとたとえば雇用の面でも地域貢献できているのではないかなと。

辻村町長

その通りですね。あさい農園さんのキウイフルーツ園地では、地域の方々もたくさん働いており、地域活性化という面でも非常に地域に貢献していただいていると思います。栽培マネージャーさんなんて、家族で玉城町に移住してまでがんばってくれていますしね。

浅井

そうですね。現在キウイフルーツ園地の栽培マネージャーをしている社員はベルギー出身なんですが、縁あってうちに入社して、現在は家族5人で玉城町に移住して働いてくれていますね。玉城町のキウイフルーツ園地では、彼をはじめ数名の社員が栽培管理などにあたっていますが、それ以外は基本的に玉城町の地元の方々をパート社員として採用しています。

浅井

それと、キウイフルーツの栽培って普段はそこまで手がかからないのですが、受粉させるタイミングや、収穫のタイミングだけかなり多くの人手が必要なんです。1年かけて育てたキウイフルーツをわずか1週間ほどですべて収穫するので、収穫のときはもうお祭り状態です(笑)。しかし、短期的に40〜50人雇用するというのは、企業としてはわりと難しいことなんですね。そういうときには地権者のみなさんや地域のお母さん方など、たくさんの地域の方々にご協力いただき作業しています。このような人手集めのご相談も玉城町にさせていただいて、自治体と連携させていただいているメリット・強みをすごく感じています。

辻村町長

玉城町としても、新たな雇用機会が生まれ、地域が元気になっているのを感じられて、嬉しい限りですよ。

Chapter 04

NZ型NZ式から
NZ型玉城町式栽培へ。
地域に根ざした、持続可能な
農業体制を確立していく。

浅井

ひとまず玉城町にNZ型のキウイフルーツ栽培体制を導入・整備できましたが、さらなる収穫量拡大や安定収穫のためにこれからも気は抜けません。これからはNZの栽培方法を玉城町にフィットさせていくような作業を進めていきたいと考えています。夏場の気温や台風などはやはりNZと玉城町には違うところもたくさんあります。玉城町の気候や環境などを考慮し、NZ型NZ式からNZ型玉城町式栽培を確立していくイメージですね。

辻村町長

なるほど。持続性というのも今回のプロジェクトの大きなポイントですよね。30年規模の長期プロジェクトですし。

浅井

そうですね。事業説明会のときに地権者の方々にもご説明したのですが、キウイフルーツは一度植えると30年以上継続して収穫が見込める果樹で、今回も地権者のみなさまからは30年賃借というかたちで農地をお借りしています。安定的に収穫できる体制を整え、それをゼスプリ社と協力してしっかり販売していく。持続可能な体制を確立してこそ、地域に根付く農業になると考えています。

辻村町長

この取り組みをはじめて以来、県外からも地方自治体や農業関係者など、たくさんの方々が玉城町に視察に来てくださるようになりました。遊休農地や耕作放棄地の増加は、日本の地方全体の共通課題。この取り組みで玉城町だけではなく、今後の地域の農業の新しい形を提示できたというのは、私としても大変誇らしく本当にやって良かったと思っています。

辻村町長

など、たくさんの方々が玉城町に視察に来てくださるようになりました。遊休農地や耕作放棄地の増加は、日本の地方全体の共通課題。この取り組みで玉城町だけではなく、今後の地域の農業の新しい形を提示できたというのは、私としても大変誇らしく本当にやって良かったと思っています。

浅井

そうですね。日本では「農業とは先祖代々受け継いできた土地で、各農家が継承していくもの」という固定観念もまだまだ多いなか、今回の取り組みでは津市に本社を持つ私たちが、玉城町という新たな土地で農業に取り組み、地域活性化に貢献できたというのもひとつ新たな農業の形をお見せできているのかなと思います。
そして繰り返しになりますが、何より官民の連携体制で地域の農業に取り組んだというのが今回の大きなポイント。今回の取り組みはあさい農園だけではできなかったし、また玉城町さんだけでも実現できなかったと思います。この取り組みをモデルケースとして、自治体と企業が手を取り合って地域の農業を活性化させていく取り組みが、これからもっと全国各地に広がっていってほしいですし、私たちも広げていきたいと思っています。